SFC版 VI 禁断の魔筆
03/07/20 アップ
●ストーリー
「この世には知らねばならぬことがある」
百と二十年ほど昔のこと、この城には、もっとも邪悪な王と妃が住んでいた。彼らはその領土の人々すべてにとって、長いこと恐怖の源であった。奇怪な儀式のうわさがそこここで聞かれ、王が神秘の技を磨いているという話もささやかれた。王は侵略によって領土を広げ力を増した。しかし、その欲望は尽きることなく、自らに並ぶほど邪悪な魔法使いと手を結び、共に手をたずさえ、彼ら以外の邪悪なるものたちを一つ一つ滅ぼす魔法の戦いをくりひろげた。
彼らがコズミック・フォージの存在を知ったのは、こうした戦いの最中であった。
異教の神を魔法の力で打ち破った彼らは、その最後の命ごいの言葉に聞き入った。それは魔法のペンとその力、筆先によってことばがつむぎ出されると、それが宇宙の中に永遠に織り込まれ、書き記されたことが現実となるという魔法の力について語った。王と魔法使いは、それを聞いた後、その敵を葬り去った。しかし、このコズミック・フォージという名の、摩訶不思議な代物のありかを聞き出すことは忘れなかった。彼らはこのペンを盗み出し、だれも想像することすらできないほどの恐怖を宇宙の中に織り込み始めた。しかし、ペンを盗み出すと間もなく、二人はお互いの力をねたみ始めた。もはや彼らは、お互いの力を必要とはしなくなっていたのである。そして、お互いの運命とこの魔法のペンの行く末を決める、最後の闘いがくりひろげられた。
それが知られていることのすべてである。城はそれ以来、住む者もなく、王、妃、魔法使い、魔法のペンがどうなったのかを知る者もない。しかし、今、汝がここに来たことによって、すべてが変わろうとしている……。
●雑感とか
(※02年7月8日〜17日の日記に追記したものです)
ウィザードリィというゲームは、#5で大きな変化を見せたが、今作ではそれを遥かに凌駕する大変革が行われた。まずゲーム画面からして、以前のような線画ではなく、グラフィカルなダンジョンとなっている(これはSFC版#5を経験しているならばそんなに抵抗はないと思うが)。また、ドアを開ける際も旧作のようにボタンひとつで蹴り開ける(……と言っても、別にアニメーションがあったりするわけではない。単にドアの手前から、ドアの向こうのブロックに進むだけである)のではなく、画面上のスイッチをクリックすることによって扉が音を立てて開く。更に戦闘となれば、多数の敵が一度に表示され、それらが各々アニメーションを行うのである。
今更改めて言うまでもないが、この辺りは世紀の大傑作『ダンジョンマスター』の影響がモロに見え隠れしている。
画面だけでもこれほど変更があったのに加え、システムも更に変化が加わった。新種族、新職業の追加。キャラには男女の性別の設定が加わり、それによってなれる職業に制限が出た。旧作の魔法は全て別の名前となり、消えたものも多く、また新しく加わったものも多い。アーマークラスは部位ごとに設定され、例えば足元を狙うネズミ型の敵などとの戦闘では足のアーマークラスが影響してくる。そしてキャラのステータスには能力値に加えて様々なスキルが設定され、例えば魔法ならその値に応じて通常より高い効果を発揮したり、また失敗したりもするようになった。
ここまで大きな変更が行われたが故に、ファンの評価はかなり酷いものであった。
「こんなのウィザードリィじゃねえ」
そこかしこでそのような叫びが聞かれ、当時は俺自身その手の叫びを挙げていた。
しかし時の流れによって、当初抱いた抵抗は薄れ、何気なくプレイしてみたのが02年7月のこと。その結果から言えば、俺としては十分面白いと言っていいゲームだった。少なくとも『新生ウィザードリィ』の第1弾としては十分に良い出来ではないかと。
基本的に、種族や職業が増えて華やかになったこと、スキルシステムによるキャラ成長が楽しいことが高ポイント。特にスキルシステム。これによって、『サムライになって斬り術(キリジュツ、と読む。クリティカル率に影響)のスキルを会得した後ビショップに転職、通常武器でクリティカルを発生させるビショップ』などの育成が可能になってえれぇ趣味に偏った育て方ができた。
話も要するに『猿の手』チックな話(と言っても俺は読んだことない。大体どんな話か、を知っている程度)だったが、中々良かった。NPCのセリフ回しもクイークエグやル・モンテスはやや電波じみていて読んでいてトホホな気分だったが、ベインキングやレベッカのセリフ回しはちとカッコ良かったかも。特にベインキング。
で、欠点。まず状態異常がウザくてしょうがねえ。ほかにもあるがとにかくこれだ。『脅え』『かゆみ』『吐き気』『暗闇』『発狂』など色々追加されたが、これらの状態異常の効果はすべて『ランダムで1ターン行動不能(コマンド入力は受け付けるが、そのターンは行動できないことがある)+α』なのだが、この行動不能の発生率がバカみたいに高い。つうか製作者バカだろと突っ込んでやりたいほどである。もうパーティの半数ほどがこれを食らったらとっととリセットしないとやってられない。特に暗闇の行動不能率が異常に高く、他のRPGならば命中率と回避率の低下くらいで済むところが、何を命令しても『○○はあてずっぽうに武器を振り回した!』ってなっちまうのはもう頼むから回復魔法を自分に使えよバカ。
もっとも当然ながらこれは敵にも同じことが言えるので、状態異常を引き起こす魔法が効きやすい相手との戦闘はかなり楽なんだが。
あと他には回復魔法が弱い(最大で6〜48しか回復しない。俺のキャラは最終的にはHPが300以上だったのに……)、魔法の種類は多いくせに効果に差がほとんどないもの多すぎ。これは上記の状態異常にも言える。
それと旧ウィズから消えてしまった点では、キャラの複数育成ができないこと、敵が宝箱を落とさない(アイテムは落とす)こと、そしてそもそもアイテムを落とすこと自体が少ないので、新アイテムを拾った時のワクワク感を味わえることが少ないのがちと残念。まあ旧ウィズから消えた楽しみは、ゲームシステムを考えるとしょうがない気もするのだが。
それとこれは欠点と言っていいのかどうかわからないが、転職してもスキルは継続されるため「上級職に転職してスキル会得→すぐ下級職に転職して一気にレベル上げ、スキルポイント増加」ということができるのが俺としては少し微妙な感じでした。悪くはないのだが、なんと言うか、安易に万能キャラを作れてしまうシステムだなーというか。それを前提にバランス取っているフシも見え隠れするんだが……。
あとストーリーにひとつデカい欠点。あのEDはギャグですか。俺は人から聞いたことがあり(当時はこれを遊ぶとは思っていなかったので)、7の体験版も遊んだことあるんで、EDの大まかな内容は知っていたが、実際に見て大笑い。EDは3種あるらしいんで、俺が見ていない残り2つのどっちかはもう少しまともかも知れんが……。
ちなみに俺が見たEDは「書いたことが真実となる魔法のペン『コズミック・フォージ』を冒険者たちが手にしようとすると謎の異星人がやってきてペン持ち逃げ」というもの。ちなみに7のストーリーは、この持ち逃げした異星人を追っかけて別の惑星に行くというトンデモなストーリーだったりする。
でも総合的には十分楽しめた。ゲームシステムとかはこのままで、上手く洗練させていけばそれこそ新生ウィザードリィの名に恥じぬゲームになり得たかも……と思ったが、世間での7の評判の悪さを思い出してみると……どうもダメな模様。