SFC版 V 災禍の中心
02/11/02 アップ
●ストーリー
城塞都市リルガミン。幾度となく災いに見舞われたこの都市は、その都度冒険者達の手によって災いを退けてきた。数年前に起こった、終焉をも思わせるほどの災いとて、冒険者の一団が古の竜ル’ケブレスより授かった宝珠を持ち帰り、その宝珠の力によって打ち払ったのであった。
だが、再び災いがこの国を襲い始めた。賢者たちはその知力と魔力のすべてを使い原因を探り、そして原因を掴むが、しかしそれはあまりと言えばあまりなものであった。自然界における地水火風の四元素、その力のバランスが乱れ、力の奔流は渦となり、この世界そのものを飲み込もうとしていたのである。更に悪いことに、その元素の乱れを正すことの出来る人物であるゲートキーパーは、その渦の中心に捕らわれ身動きできない状況に追いやられていること、最後にこれらすべてはソーンなる魔女の手によって行われていることが判明する。
急がねばならない。渦はひたすら大きくなり、今にもこの世界を飲み干さんばかりになっている。ソーンを討ち、ゲートキーバーを解き放ち、そして四元素のバランスを安定させ渦を消さねば、この国には、いやこの世には未来はない。
●雑感とか
厳密に言えば違うのだが、俺が二つ目に触れたウィザードリィである。一作目から大きな変化がなかったウィズにおいて(#4は特殊過ぎるので考えない)、システムに様々な形で手が加えられた作品である。新たな魔法の追加や、武器の射程の概念の追加などが目新しい。また宝箱の罠も一新され、その凶悪さを増した。中でも一際凶悪なのが「高圧電線」、パーティ内の数人が問答無用で死、もしくは灰になるのである。
しかし一番大きな変化といえば、会話システムの追加であろう。迷宮内に存在するNPC(ノンプレイヤーキャラクター)、彼等と会話したり、アイテムを渡したり、金を渡したりすることで情報やアイテムを得たりできる。それは同時に、シナリオ進行において情報を得ることの重要さにも繋がっており、謎解きの難易度はシリーズ中でも高いほうと言えるだろう。俺自身、最後の最後に出てくる謎掛けの答えはちっともわからず、人に答えを訊いてようやっと先に進むことができた。
……と、色々書いてきたが、実はほとんど印象に残っていなかったりする。ぶっちゃけて言えばあまり俺はこのシナリオは好きではない。先程も書いたが「高圧電線」を筆頭に宝箱の罠や迷宮そのものが凶悪化し「死んで当然リセット前提」と言わんばかりの難易度の高騰(オートセーブの撤廃とクイックセーブの追加がそれを表している)、そしてそれの救済措置としてのつもりなのか、「死・灰の状態から確実に蘇生できる泉」「(リセット併用で)確実に若返ることのできる泉」の存在。これらを総合すると「バカスカ死ぬけど簡単に生き返るからガンガン進んじゃってねー」というふうに見えてしまうのは、俺の性格が歪んでいるが故なのか。
また、おまけダンジョン的存在である、地下777階。この先に控える隠しキャラである「ララ・ムームー」、こいつが非常に曲者だった。こいつは和製RPGによくある「ラスボスより強いおまけの敵」なのだが、どういうわけかレアアイテム所持率が異常に高く、こいつさえ倒せればあっと言う間に全アイテムのコンプリートができる。そのため普通にアイテムを探して迷宮に潜る楽しみがほとんど無くなってしまうという、ある意味#5最高のトラップであった。
ちなみに俺はこいつに初めて勝ったとき、いきなりムラマサを二本も入手してしまい、思いっきり拍子抜けしてしまった。ムラマサは苦労して手に入れるからこそその強さが際立つものだというのに、こんな簡単に、しかも二本も入手してしまっては、一体なんのレアウェポンか、なんの最上級武器か。
確かにレア武器の入手なんぞ所詮確率論でしかないのだし、人によっては最下層に降りて敵を倒したらいきなり二連続で拾う可能性だって十分有り得るが、しかしこいつの存在は確率論などを吹っ飛ばすようなものである。はっきり言えば、ウィズの武器収集の意味合いに対し、ララ・ムームーの存在は邪道とすら言えるものだと俺は思う。
何事もなく入手してしまった二本のムラマサを手にリルガミンに帰るときの足取りは、不思議とやたらに重いものであったことを、俺は未だによく憶えている。
そんな印象なので戦闘のほうもよく憶えていない。やはり凶悪なバランスだったのか、それとも戦闘に限っては面白いと言えるものであったのか……。
一応フォローしておくと、謎解き自体は難易度こそ高いものの面白かった記憶がある。おつかいゲームという感じもしなくはないが、俺は楽しいと思えた。また武器の射程も良い変更だと思う。特に後衛の盗賊は今までほとんどの場合「ぼうぎょ」しか選択する意味がなかったので、戦闘に参加できるようになったこの変更は高く評価している。回避率を上げ、モンスターに奇襲をかけられるようになる「かくれる」コマンドも同様に評価している。そして、鍵のかかったドアもまた、冒険っぽさが増したので良いと思う。
全体的に、今までは宝箱が出るまで出番がまったくなかった盗賊の重要性が増したのが、変更点の中では良かったと思っている。
なお、ロバート氏はこのシナリオ#5を最後にウィズから手を引いてしまう。そして#6以降は別作品と呼ばれることとなって行くのである……。