01年1月号
「マニア殺しの危険な発想 極限の攻撃力を封じる「撃ち返し弾」」

ギャプラス、グラディウスetc……異常とも言えるパワーアップを手に入れたプレイヤーを
襲ったのは、その破壊力を逆手に取った恐るべき攻撃だった……

04/09/12 アップ

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●本文

 今回のお題である「撃ち返し弾」というのは、破壊した敵が消滅する際に撃ってくる弾のこと。敵が自発的に撃ってくるのではなく、プレイヤーによって破壊されると撃ってくるというのがポイントで、感覚的には、破壊された敵が弾に変化して飛んでくるかのような印象を受ける攻撃だ。
 もちろんこれは、すべてのゲームにある攻撃ではないし、あっても2周目以降の高次ステージ専用の攻撃である場合がほとんどだ。初心者にはあまり縁の無いものかもしれないが、シューティングゲームをやり込んできたプレイヤーならば、何らかの作品で経験したことがあるのではないだろうか。近年の作品では、彩京シューティングの2周目には様々な形で盛り込まれており、プレイヤーを苦しめて(楽しませて?)いる。
 今回は、この「撃ち返し弾」のルーツや、その進化の過程などを振り返ってみることにしよう。

■起源

 一般的に「撃ち返し弾」の起源とされているのは、80年に新日本企画(後のSNK)が発売した、「サスケVSコマンダー」である。敵、自キャラとも忍者の、純和風(?)の固定縦画面シューティングで、当時はわりと人気のあった作品だ。
 この作品の場合は、撃った敵忍者の死体(当然、当たるとミスとなる)がドサドサ落下してくるというもので、厳密には「撃ち返し弾」ではない。だが、ゲーム的な側面から考えると、これはまぎれもなく「撃ち返し弾」の原型であると言える。
 84年にナムコが発売した「ギャプラス」になると、現在の「撃ち返し弾」に、より近いものになっている。この作品においても、敵が撃ち返してくるのは通常の敵弾ではなく、「ビーンカード」という四角形の物体だった。ゲーム性から見たその存在理由は、以降の「撃ち返し弾」のそれと、ほぼ同じものとなっていた。

■存在理由

 「ギャプラス」以降は、グラディウスシリーズを中心とするコナミシューティングにおいて、2周目以降に「撃ち返し弾」が発生するのが定番となり、マニアを熱くさせた。「撃ち返し弾」という言葉自体も、おそらくはこの時期に、「グラディウス用語」として生まれたものであろう。
 「ギャプラス」「グラディウス」のころから「撃ち返し弾」が存在するゲームが増えた。それはこの時期、急速に自機のパワーアップが過激化したことと深い関係があると見ていいだろう。
 この手のシューティングはパワーアップすることによって、自機の弾が画面中を覆い尽くすほどの攻撃力を備えられるのがウリ。自機の移動スピードを上げるパワーアップが存在することもあり、ほとんどの敵を出現即破壊していける場面も少なくないのだ。
 もちろん、このような破壊力まかせの出現即破壊プレイは気分がいいし、なにより攻略の方針として理にかなっている。
 しかし、そういったプレイだけで先に進めてしまうのでは、「弾避け」という、重要なシューティングの楽しさが薄くなってしまうのもまた事実。
 「撃ち返し弾」というものは、自機の過激なパワーアップの面白さを活かしつつ、上級者向けの「避け」という要素においても、高度なゲーム性を引き出せる可能性を秘めていたのである。

■攻略的側面

 「撃ち返し弾」によってゲーム性が高められる大きな要因は、敵を倒すという単純な行為に対して、どう撃つか? いつ撃つか? そもそもまったく撃たないほうがいいのか? といった、さまざまな試行錯誤や戦略が介入する余地が生まれるところにある。しかしこれが、強力な自機に出現即破壊プレイを許さないがため、ただ単に敵を硬くしたようなゲームだったら、こういう発想は生まれない。「硬い〜」とか言いながら、ボタンを連打するしかないわけだ(別にそういうゲームがつまらないとは限らないが)。
 「グラディウス」の2面のボス前、悪名高き「ザブ」地帯は、「撃ち返し弾」によって2周目のゲーム性がガラリと変わった代表例と言えるだろう。「ザブ」地帯というのは、耐久力もなく、自発的には弾を撃ってこない「ザブ」というザコが体当たりしてくる場面のことだ。1周目は撃ちまくっているだけでなんの問題もない。ところが2周目以降、1機あたりたった1発の「撃ち返し弾」がくるだけで、地獄のような難しさに……。
 フルパワー時に撃ちまくるべきか、避けに徹するべきかで、当時のマニアは頭を抱えていたのだ。

■大旋風

 これは余談になってしまうが、自機に強力な攻撃手段を与えながら、出現即破壊という攻略への対策がなされていなかったゲームがあった。その、意外な攻略法が成立してしまった例を紹介しておこう。
 89年の「大旋風(タイトー/東亜プラン)」がそれに当たる。オーソドックスな縦スクロールシューティングなのだが、ボムにちょっと特徴があった。ボムボタンを2連打すると、通常のボムとして使用でき、1回しか押さない場合は、援護機の編隊が出現してショットを撃ってくれるというシステムである。
 この援護機が強かった。そして意外にショットが強力だったため、展開した援護機の攻撃+画面一番上に張り付かせた自機で、ほとんどの敵を出現即破壊できる場面が多かったのだ(もちろん、高次周でも通用する)。
 はっきり言ってこのパターン、端から見ていると色々な意味で「?」という感じだったのだが……。とにかくこれが決め手だったことは間違いなく、ハイスコア集計も1回目で1000万点が達成され終了、という実にあっけないゲームであった……。
 開発者は、このような遊ばれ方(攻略)を想定していたのであろうか?

●コラム(右ページ上段)

(ギャプラス写真5枚)
―PARSEC 14―ここから物語が始まる。

●コラム(左ページ上段)
撃ち返しヒストリー

(写真キャプション。全5枚)

■サスケVSコマンダー
敵の忍者に手裏剣をヒットさせると、死体(?)となって落下。プレイヤーがこれに接触するとミスになる。この写真は、死体に当たって主人公のサスケがやられている決定的瞬間である。

■ギャプラス
6匹の敵キャラを味方にした状態。攻撃力はすさまじいが、自機の移動範囲も大幅に制限されるため、味方にした敵も次々に被弾して消えていく。

14面以降になると「ビーンカード」が発生。攻撃力まかせで考えなしに敵を撃つと、とても避けられないような状況に追い込まれる。

■沙羅曼蛇(写真解説:自機を囲うように8機のザブが登場している写真)
沙羅曼蛇5面のザブII。自機を囲んで突進してくるため、撃ち返し弾が大問題になったが、左右移動だけで簡単に避けられることが判明。この避け方がなかったら、どうなっていたことか……。

■グラディウスIII
グラII時代、「結晶が撃ち返してきたらやばかったよね」などと冗談を言っていたら、グラIIIの泡はバッチリ撃ち返してきて唖然。装備によっては、撃ち負けて押しつぶされることも多いというのに……。

●右ページ欄外

本文中でも少し触れているが、彩京ゲームの撃ち返し弾もかなり工夫していて奥深い。画面上のほうで撃つと2WAY撃ち返し弾になり、下のほうで撃つと単発の撃ち返し弾になる敵とか、加速する扇弾を撃ち返し弾として使うとか。最新作ドラゴンブレイズでは、なぜか撃ち返し弾だけ弾のデザインが違い、グラディウスシリーズの弾にそっくりなのだ。

●左ページ欄外

撃ち返し弾って、たいてい2周目以降に設定された攻撃なんだけど、パロディウスだ!では、1周目から撃ち返してくる。無理矢理ランクを上げれば2面で撃ち返しを出させることもできる。まあ、このゲームの場合はさらに凶悪な「時間差撃ち返し弾」が2周目に控えているんだけどね。


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