02年3月号 「確率の壁を越えた栄光」

『F/A』――ランダム・ヘルプとの戦い――

03/12/23 アップ
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●本文

 ゲームに隠された魅力。今回のテーマである『F/A(92年/ナムコ)』には、人知を超えた努力によりつかみ取れる面白さが潜んでいる。しかし、そこにある規則性と不規則性という相容れない要素が、数多くのドラマを生んできた。


■F/A

 発売当時に初めてこのゲームを見たとき、もしくは一〜二回プレイした段階で、純粋にゲーム内容で判断して「これは面白そう!」と思えた人は、果たしてどれだけいたであろうか?
 『F/A』は対空ショットと対地ショットを2ボタンで撃ち分けるタイプの縦スクロールシューティングで、92年当時としてもかなり地味なゲームだったと言っていい。派手なパワーアップやウリとなる得点システムなど、パッとマニアやスコアラーの耳目を集めるような要素が一切なく、グラフィックにしても当時の平均レベルだった。表面的にプレイヤーにアピールしていたのは、当時珍しかったレイヴ系BGMのズバ抜けたカッコよさだけだったのではないだろうか。
 ただし、このBGMの魅力はかなりのもので、「曲がイイから」というセリフは、このゲームにコインを投じる理由として、最も多くの人が口にしたものだった。
 かくいう筆者も曲のよさに釣られ、何となくこのゲームを始めたクチで、隠されたこのゲームの奥深さに気付き始めたのは、それなりにやり込んでからだった。
 『F/A』の、ゲーム的な本当の面白さやスゴさ。それは、まるで封印されているかのごとく容易には触れさせてもらえないものなのだ。そしてその封印を解き、真の魅力に到達するためには、スコアラー的なアプローチが不可欠だった。
 むろん、ライトユーザーにその封印が破れるハズもなく、彼らにとっての『F/A』は、曲がいいだけのクソゲーという認識で終わったことだろう。余談だが、商品としての『F/A』の弱点はこの辺にあったように思う。


■封印の向こう側

 シューティングゲームの本質的な面白さは「撃つ」ことと「避ける」ことがベースとなる二大要素だが、『F/A』は弾避けに魅力を求めるべきゲームではない。この作品のゲーム的な面白さや奥深さは、最終的に「敵機を撃つ」ことに集約されていくものだった。
 『F/A』には先ほども書いた通り、特別変わったスコア稼ぎのフィーチャーというものはなく、出現する敵機を逃さず撃っていくことだけが、最大にして唯一の「稼ぎ」である。そして出現する敵機の数が比較的少ない数で完全に固定されているため、撃てる敵機の数を完全に把握することが可能だった。
 これはすなわち、末尾に至るまで明確な「理論限界点」を算出できることを意味しており、末期の『F/A』のハイスコアは、緻密な「減点法」により決定される性格が非常に強いものになっていった。
 たとえば、200点のザコヘリを一機撃ち漏らしただけでハイスコアが取れない可能性が出る。そんなシビアなプレイこそが、『F/A』というゲームを最高に輝かせる遊び方であり、『F/A』は緻密な点数の積み重ねを楽しむゲームとして優れていた。
 しかし、それと同時にその特性に似つかわしくない「爆弾」を抱えていたのだ。
 「運ゲー」という言葉を聞いたことがあるだろうか? ハイスコアの世界で、得点が運に左右されるゲームを指して使われる言葉だ。どちらかといえば誉め言葉ではなく、マイナスイメージを感じる人も居ることだろう。確かに、極端に運の要素があるゲームの場合、真面目にスコアを狙う気が萎えるということも少なくない。しかし、ほどよい運の要素は、時としてスコアバトルを盛り上げるため、この上ないスパイスとして働く場合もあるのだ。
 一般的にはあまり知られていないが、『F/A』にも運でスコアが大きく変動する要素が存在する。この運こそが『F/A』の魅力を引き立たせるスパイスなのだ。


■ランダム・ヘルプ

 通称「ヘルプ」と呼ばれる得点アイテムは、特定の敵を倒すと出現し、回収すると一個に付き2500点を得られる。「ヘルプ」の出現数は基本的に各面ごとに決まっているのだが、五面のある場所だけはなぜか出現数がランダムだった。
 200点のザコを必死で追い、1000点、2000点といった僅差で勝負が決まるゲームなのに、この場面だけは運によって2500点単位でスコアが変わってしまうのだ。五面の総ヘルプ数は最高で34、最低で29、つまり、最大で1万2500点もの点数がランダムに委ねられているのだ。
 もちろん、スコアがそれほど煮詰まっていない時期には、このランダムヘルプの存在はまだそれほど絶対的な要素ではなかった。しかし、末期にこのゲームのハイスコアが「減点法」の性格を強めるにつれ、その影響はとてつもなく大きいものになっていく。
 そして、筆者はこのランダムヘルプによって引き起こされた、凄まじいドラマを見せ付けられてしまうことになる。
 そのドラマの主人公、ここでは仮にGB氏としておこう。93年9月14日。彼は207万2900点をたたき出し、当時の「6WAY」部門の全国トップスコアを更新することに成功した。「6WAY」は最もハイレベルで非常に高いスコアが記録されていた激戦区。ゲームが発売されてからほぼ一年が経過し、スコアも完全に落ち着いていた時期だったが、それでも、それは間違いなく賞賛に値する素晴らしいプレイだった。筆者は、その記録が達成される瞬間、ギャラリーとしてその場に立ち会うという幸運に恵まれていたのだ。
 だが結局、そのスコアとGB氏のスコアネームが、雑誌の全国トップ欄を飾ることはなかった。GB氏がスコアを出した数日後、それまでのスコア保持者であったTYR−HIM氏がGB氏を上回るスコアを出していたのである……。
 HIM氏が出したスコアは207万5150点、そして気になる五面のヘルプ数は34。これに対し、GB氏の五面ヘルプ数は33……。
 そう、GB氏のほうが250点分多く敵を撃っていたのだが、そのアドバンテージはランダムヘルプたった一つでひっくり返されていたのである……。
 この出来事はかなりショッキングだったが、このことが理由で運ゲーに対して否定的になるとか、自分の中で『F/A』の評価が低くなった、ということはない。
 『F/A』の封印された面白さとは、「理論限界点」を目指し、シビアに実力を積み重ねることと、絶妙な運の巡り合わせ、この二つに納得できた者だけが得られるものなのではないだろうか。



●コラム(左ページ上段)

とっても運なアノ場面&ミョーに緻密な稼ぎ
努力じゃどうにもなりません! それなのにビミョーな稼ぎがキツいんです!

(写真キャプション。全7枚)
■1:五面のランダムヘルプほどではないが、運がからむ場面は他にもある。二ボスでは限界までザコを撃って稼ぐのだが、運が悪いとボス本体に逃げられてしまうことに。もちろん終了。

■2:これがウワサの五面ランダムヘルプ地帯。総ヘルプ数34個は非常に確率が低く、全国トップを取った人ですら、一回も見たことがないという人がいたぐらいだった。

■3:ラスボスの二回目の弾幕も実に嫌らしい。パターンにならないため、運が悪いと無茶苦茶難しい場合があるのだ。一発くらえばマイナス10万点、当然その場で失格である。

■4:1面ミサイル地帯。地面に着弾するミサイルは、1発でも弾を当てておけば点が入るのだ。渋い。

■5:ボス関係でのザコ稼ぎもあるが、敵機の出現数は決まっており、ミスは許されない。

■6:一見ただのザコに見えるヘリだが、マニアックなアルゴリズムをもっていた。うまく誘導すると、画面外に逃げずに、停滞してくれるのだ。

■7:点数のカタマリのような4ボスも、弾を当てておけば本体破壊時に得点が入るパーツがある。サイドアタックを駆使して、高得点を稼ぎ出すのだ。



●欄外

■はみだしF/A:ヘルプ数がランダムなのは基本的に五面だけなのだが、ごく稀にそれ以外の面でも、通常満点とされるヘルプ数より多くヘルプが出ることがあるようだ。これまでに目撃例があるのは二面と七面で、いずれも通常より1個多いヘルプ数になったという。バグなのか? それとも、何らかの条件が存在するのだろうか?

■はみだしF/A:デモ画面中の自キャラを操作できるゲームが時々あるが、実は『F/A』もその一つなのだ。1P側の対空ショットボタンしか反応しないのだが、ショットを撃っていれば少しだけ長生きできるぞ。ゲーセンで『F/A』を見付けたら、試してみるといいだろう。かな〜りムナシイけどね。




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