02年9月号 「「1コイン天界」への挑戦」

高い難度とゲーム性を誇る、カリスマ的名作。その究極プレイとは……。

04/01/23 アップ
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●本文

 近年では作品数が激減しているアクションゲームだが、かつてはシューティングと並ぶ一大マニアック・ジャンルであった。『アレックスキッド』『最後の忍道』etc.……難度の高さ故、クリアするだけでもステータスになるようなカリスマ的作品も存在しており、アクションというジャンルの盛り上がりは、現在とは比べものにならないものだった。
 『妖怪道中記』もそういったカリスマ的アクションゲームの一つであり、現在でも一部マニアには高く評価される傑作である。
 このゲームにはスコアがなかったが、プレイ内容に応じて変化する5種類のエンディングが用意されていた。当時のスコアラーやマニアは、1コインで最高のエンディング――「天界」――を出すことを目標として、このゲームへ挑んでいったのだ。
 今回のオールドゲームミュージアムでは、その独特で魅力的なゲーム性、興味深い攻略の変遷について紹介していこう。


■地獄火

 「1コイン天界」を目指したシビアなプレイにおける『妖怪道中記』のゲーム性には、アクションゲームとしては珍しい【敵の出現法則】が、大きく影響している。
 このゲームの敵キャラは、マップ上の地形に付随する形で「出現場所」が決まっている「定位置敵」と、プレイ時間からゲームオーバーまでカウントされ続ける内部タイマーに応じて、マップ地形とは関係なく「出現時刻」を決められている「タイム出現敵」が混在している。
 『妖怪道中記』は任意スクロールでゲームが進行するため、マップ上を進んでいく早さで時間を調節すれば、難所にやっかいな「タイム出現敵」が重ならないようにすることができた。
 そして、「やっかいなタイム出現敵」の最たるものが、悪名高き「地獄火」である。これは「タイム出現敵」の出現テーブル後半に、多数出現する。通常、敵に接触しても1、2ダメージで済むが、「地獄火」に接触すると、16目盛ある体力ゲージが丸々無くなり、即死級のダメージを受けてしまう。
 撃ち込めば破壊することは一応可能だが、耐久力があまりにも高く、ほかの敵をさばきながら倒すのは無理なケースがほとんど。走って振り切ろうにも、横方向のスクロールアウトでは消すことができず、立ち止まればまたすぐに画面外から現れる……。
 地獄火に対しては、会話デモのある場面に地獄火の出現時刻を重ねて出現そのものを防ぐか、マップ上の縦スクロールするポイントに地獄火が出現するようにして、縦方向のスクロールアウトで無理矢理消す、といった、かなり苦しい対策を講じるしか無かった。
 「1コイン天界」を達成するためには、永久パターン防止キャラであるかのような地獄火を、マップ上のどの地点で出すかを精密に管理・調整することが不可欠だったのである。


■初期の天界

 このゲームは全5面構成で、ステージによってクリア条件が異なっているのが一つの特徴でもある。1コインクリアを目指す上で攻略初期に大問題になったのは、4面ボス「三途ババ」の存在だ。
 4面をクリアするには、ステージ道中にいる中ボス的存在の強敵、「妖木霊」「妖火霊」「妖岩霊」を倒し、彼らが持っている三種の神器「木の宝」「火の宝」「山の宝」をすべてそろえて「三途ババ」に見せにいかなくてはならない。
 しかし、この3体の中ボスがいる場所を巡り彼らを倒していると、それだけでかなりの時間をくわれてしまい、5面では地獄火がとんでもない場所に出現して殺されてしまう……。
 攻略の初期においては4面で三種の神器をすべて集めることと、5面における地獄火の出現タイミング調整は、両立不可能と考えられていた。
 そこで考え出されたのが、三種の神器を集めずに三途ババをクリアしてしまうという荒技(バグ技?)。
 これは当時のゲーメスト誌上で「おたやん渡り」などと呼ばれていたもので、「首つき」という空中敵を踏み台にして、三途ババの上を強引に飛び越えて先に進んでしまうという、冗談のようなパターンである。
 そもそも、ステージクリアの条件になっている重要なイベントを、強引なバグ技を使って無視して進んでいるのに、その後、何事もなかったかのようにゲームが進行すること自体どうかしている。
 いずれにせよ、初期の「1コイン天界」は、アーケード史上有数のユニークさと実用度を併せ持つ、奇妙な攻略の発見によって達成されたのだ。
 そしてこの「おたやん渡り」の発見が、『妖怪道中記』の攻略過程において、大きなターニングポイントだったことは間違いない。
 当時のゲーメストにおけるハイスコア集計でも、「おたやん渡り」使用による「1コイン天界」の達成をもって集計は終了。この段階で『妖怪道中記』から離れていくマニアも多かった。


■究極の「天界」

 「おたやん渡り」の発見、それを使った「1コイン天界」の達成により、完結したかに思えた『妖怪道中記』の攻略。しかし、ごく一部のプレイヤーたちは、究極のプレイを求めてこのゲームにこだわり続けた。
 攻略初期には不可能とさえ思われた、正攻法で三途ババを越え天界を目指す「1コイン三種の神器天界」への挑戦である。
 当然、「おたやん渡り」使用パターンによる単なる「1コイン天界」とは、比較にならないシビアさを要求されるわけだが、それでも三種の神器を集めての「1コイン天界」は後に達成されることとなる。「イテイテ2回」、つまり全面通して2回しか敵に接触せずに、「三種の神器天界」を達成したプレイヤーすら存在しているのだから恐ろしい。
 ゲーメスト誌上に「おたやん渡り」使用による、極めて詳細な「1コイン天界」の攻略が掲載されていたことの影響が大きいのだろう。いまだに「1コイン天界」=「おたやん渡り」と思っている人も少なくないようだ。
 しかし、ごく一部の超マニアックなプレイヤーは、『妖怪道中記』というゲームを、ここまで遊び尽くしていた。
 たどり着くゴールは同じ天界であるにもかかわらず、あえて難しい過程を選択し、それに挑戦する「三種の神器天界」という遊び方。
 それは、純粋に『妖怪道中記』が好きなプレイヤーに与えられた、カリスマゲームとしての器が可能にした、至高の遊び方なのだろう。
 『妖怪道中記』発売からは既に15年が経過しているが、この名作と「天界」に挑んだ先人たちによって織りなされた、その奇妙で興味深い攻略のストーリーは、スコアとはまた違ったところにある、滋味豊かなゲームの面白さを、今でも我々に語り掛けてくれている。



●コラム(左ページ上段)

地獄の道中・名場面集

妖怪道中記は、旅の途中で出会うさまざまなキャラクターや凝ったイベントの数々も実に魅力的だ。竜宮城でもらった玉手箱を開けたらジジイになってしまったり、ニセ神の池があったり……。ステージクリアの条件が、単純にボスを倒すというものばかりでないのも面白い。

(ステージ1、スタート地点の写真キャプション)
■ステージ1・地獄入口のスタート地点。ここからたろすけの地獄道中が始まるのであった。

(ステージ2、神の池写真キャプション)
■ステージ2・苦行の道の途中には「神の池」があり、事実上の1upであるハートをもらえる。

(ステージ3、悪ガキ3人組写真キャプション)
■ステージ3・幽海のクリア条件は、悪ガキ3人組から亀を助ける(買う)こと。3万も取られるので、ここまでにお金を貯めておかねばならない。

(ステージ3、竜宮城写真キャプション)
たっすけった亀に〜連れられて〜♪ とステージ3クリア時のデモ。この後、玉手箱を開くイベント(超危険)が……。

(ステージ4、三途ババ写真キャプション)
■ステージ4・裁きの谷のボス「三途のババ」と御対面。「おたやん渡り」を使えば、このキャラクターを飛び越えて行ける。

(ステージ4、閻魔大王キャプション)
ステージ4クリア後の演出。三途の川を越えると、えんま大王がぁ! 天国に行けるか地獄に堕ちるかは、この先の行い次第だ。

(ステージ5、最終シーン写真キャプション)
■ステージ5・輪廻界をクリアすると、お釈迦様がぁ! この後、たろすけの運命が決まるのだ。努力が報われる瞬間である。



●コラム(両ページ下段)

エンディングコレクション

さまざまな苦労を乗り越えてお釈迦様のところまで辿り着いたたろすけは、その行いによって転生する世界が決められるのだ。無駄な殺生をしたり、欲深いと判断されると、天界はおろか、人間の世界にも戻れないぞ。行いが悪くなるにつれ、人間界→畜生界→餓鬼界→地獄界と悲惨な(面白い)エンディングになっていく。天界の具体的な条件はステージ5・輪廻界で、敵を一匹も殺さず、お金アイテムを一つも取らないこと(厳しっ!)。間違ってカエルを一匹踏んだだけでもダメなのだ。


■地獄界
地獄に墜とされ、釜ゆでにされているたろすけ。ちなみに、筆者的には1コインクリアなら地獄界でも十分難しいし、立派だと思いますが……。

■餓鬼界
一番面白いエンディング? たろすけを含めた3人の餓鬼がいるところに、食べ物が出てきて取り合いになるが、たろすけは取り合いに負けてションボリ。

■畜生界
畜生界に落ち、ブタの姿で生まれ変わってしまったたろすけ。農家の養豚場のように見えるんですが、この後食べられちゃったりするんでしょうか?

■人間界
これも面白いエンディング。弔問客がたろすけの亡骸に手を合わせていると、棺桶に納められていたたろすけがムックリと起き上がり、弔問客が仰天!

■天界
ベストエンディングの天界で、天女様に囲まれて嬉しそうなたろすけ。当時は「俺だったら人間界のほうがいい」などと言うゲーマーが後を絶たなかった。




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