02年11月号 「非パターンゲームの魅力」
教科書のような攻略記事、うんざりじゃない?
03/12/28 アップ
●本文
あなたは、ビデオゲームをプレイしているとき、どんな瞬間にどんな魅力を感じているだろうか?
毎回同じ場所に出てくる敵の出現パターンや地形などを覚えていくことで、それらに対応できたときの達成感や面白さ、そして行動を一定化したことで生ずる安全性はパターンゲームの大きな魅力だ。
しかし、パターン化が安定した後は、それはゲームではなく、作業となってやしないだろうか?
さまざまなゲームの魅力や面白さの質、ゲームの上手さや上達方法といった事柄を考える上で、「パターン性」や「ランダム要素」というのは、非常に興味深いキーワードだ。
今回のオールドゲームミュージアムでは、88年に発売されたタイトーの名作『サイバリオン』を振り返り、非パターンゲームの魅力について考えてみたい。
■サイバリオン
『サイバリオン』は、自キャラである金色のメカドラゴン(=サイバリオン)をトラックボールで操作して、全方向に任意スクロールする広大な迷路状のマップを進んでいくという、実に個性的なデザインの作品。
当時のマニアにはサウンド、グラフィック、世界観など多くの面で評価されていた作品だが、今回はゲーム内容面での大きな特徴である「非パターン性」に注目したい。
『サイバリオン』には、「基礎編」と「実戦編」の二つのゲームモードが存在する。
このうちメインのゲームモードである「実戦編」は、地形やそれに付随するトラップ、ステージ道中のザコ敵の出現パターン、各ステージに登場するボスの種類やその攻撃方法etc……と、非常に多くの要素がランダムに支配されている。
このため、一般的なシューティングゲームやアクションゲームの攻略方法である、「マップや敵の出現パターン、ボスの攻撃パターンや避け方を覚えて、プレイヤー側も毎回同じ動きで対応する事」、つまりプレイを「パターン化」するというアプローチはできないのである。
『サイバリオン』を上達するためには、トラックボールの操作に慣れ、自キャラの制御スキルを向上させることがまず求められる。特異な操作系、操作感覚を持つゲームには、自キャラを動かすこと自体に、難しさと面白さが同居しているものが多いが、『サイバリオン』はその典型例と言えるだろう。
自キャラの制御スキル以外では、その時のマップ状況から、次につながる可能性のある地形と、そこに配置される可能性の高いザコやトラップなど、一手先の展開を「読める」ようになること、ボスの基本的なアルゴリズムを理解し、その上で「フェイント」などにも対応できるようになることなど、経験の積み重ねでセオリーを身に着けることが上達に必要になる。『サイバリオン』の場合、パターンが分かっていきなりうまくなるということなく、プレイを重ねることで、ランダム要素に対抗できるとっさの判断力や操作スキルを少しずつ養っていくことでしか上達は望めない。
このように、『サイバリオン』は、徹底して非パターンをコンセプトとしたゲームデザインであり、ランダム要素による面白さを最大限に活かすことに成功していた。
■それぞれの魅力
『サイバリオン』のような非パターンゲームの魅力は、パターンゲームのそれとは対照的なものだ。パターン性の強いゲームの醍醐味は、パターンを作るまでの「パズル的要素」と、パターンが完成した後の安定したプレイで味わえる「征服感」であろう。
ザコ1匹の動き、敵弾1発の弾道さえも把握・コントロールする工夫によって、初めはクリア不可能に思えるような難所が、少しずつ突破されていく過程がある。そしてその結果、計算され尽くされたパターンを実行することによってのみ生まれる、さまざまな名場面が誕生する。
一方、『サイバリオン』のような非パターンゲームの魅力は、どんなにやり込んでうまくなっても、パターンゲームをうまくなったときのように「征服しきれない」ところにある。
パターンゲームの場合、完成度の高いパターンを作ってうまくなればなるほど、プレイ自体は安定した作業的なものになっていく傾向がある。
しかし、非パターンゲームの場合、どんなにやり込んで上達したとしても、パターンゲームの完成されたプレイのように安定した作業的なものにはなりにくい。
上達しても、常にその場の判断や反応速度、積み上げた経験に基づく勘といった、プレイヤーの実力で勝負しなければならないことが、非パターンゲームの面白さの本質なのである。
シューティングゲームを中心とした現在のパターンゲームを取り巻く状況――ゲーム自体の複雑さや難しさ、それに対するマニア側の攻略方法論など――は、さまざまな意味であまりに成熟しきっている。
一方では、完全パターンゲームの醍醐味も知らぬまま、悪い意味で「憶えゲー」という言葉を使うプレイヤーが増えたと感じることも少なくないが、彼らの気持ちも分からなくはない。
このようなパターンゲームの現状に比べると、非パターンゲームというのは、まだ多くの可能性が眠る、未開発のジャンルであるはずだ。
現在は、「対人戦」という形の、ある意味究極の非パターンゲームである対戦格闘ゲームが一大ジャンルとなっているが、非パターンという魅力的な要素は、もっと多くのゲームにも加味できるはずだし、潜在的な需要も少なくないのではないだろうか。
『サイバリオン』を越える非パターンゲームの出現を期待したい。
●コラム(左ページ上段)
サイバリオン・ランダム写真館
■Story
『サイバリオン』には決まったストーリーというものがなく、プレイ内容によってシナリオが変化していくのも特徴の一つ。ダライアス、レイメイズ(渋!)といった他作品の世界とクロスオーバーするシナリオも存在していた。
■Map
迷路状の地形は、パーツがランダムで組み合わされて構成されていく。ただし、トラップの配置や特定の地形に必ずくっ付いているザコの出現などは、経験を積めばある程度「読む」ことができた。
■Equipment
ストーリーの展開によって、さまざまなパワーアップを装備することができる。ダライアス世界とクロスオーバーするストーリーでは、シルバーホーク編隊がオプションに!
■Boss
このゲームのボスはランクの上昇によって、アルゴリズムが強化されるのが特徴。弾発射モーションによるフェイント→体当たり攻撃のような、凝った攻撃連携を仕掛けてくるものもいる。
■Ending
シナリオの分岐によりエンディングは100種類以上が存在する。主人公も結局死亡、プロコ死亡、救出した科学者が最後の最後で死亡、主人公以外の人類絶滅など、後味の悪いエンディングが多いのが実にタイトーっぽくてイイ感じ。
●コラム(両ページ下段)
Boss Collection
『サイバリオン』には、左に紹介した7種のボス以外に、自キャラである「サイバリオン」と同じ姿をした「メガバリオン」と「ガルドバリオン」が存在する。この2種は実戦編の5面にしか登場しない真のボス的な存在で、4面クリア時の得点が高くないと絶対出現しないのだ。
※今回は撮影環境の劣悪さ+筆者の腕が錆びついていたことにより、その姿を撮影することができませんでした。ゴメンナサイ。
■アーマックス
機動性を重視し、複雑な地形への対応が可能である。
身長28m
体重650t
■ギガット
空中からの急降下による加速攻撃を最も得意とする。
身長25m
体重690t
■ガットノイザー
陸戦用重走行メカ。遠距離用ブーメラン砲は破壊力大。
身長54m
体重1517t
■グロドロイド
その堅い甲羅は絶大なる防御力を誇る。陸海空万能。
身長41m
体重1827t
■ケプロス
ホバリング機能搭載。空中戦を想定して、開発される。
身長52m
体重980t
■ザンディック
海戦用大型戦艦。対空攻撃用に長距離方主砲を搭載。
身長78m
体重2932t
■ザイゾログ
もともとは、対地中戦用に開発されたが、空中戦も可能。
身長34m
体重690t