02年12月号 「グラII・レーザー装備の戦い」
もし、あのハッチがあともう半キャラ分、下にセットされていたら……。
03/12/22 アップ
●本文
88年に発売された『グラディウスII』は、異なる性能を持つ複数の装備から、任意に自機を選択可能なシステムを備えた初のシューティングゲームである。
ミサイル、ダブル、レーザーの3要素によって差別化された4種の装備は、セレクトシーンでの並び順にちなんで、それぞれ1番(装備)、2番〜と、「ナンバー」で呼ばれるようになっていく。そして、大半のプレイヤーが「リップルレーザー」装備――特に2ウェイミサイルを持った4番――に流れるまでに、発売からさほどの期間は要さなかった。
なぜなら、同シリーズの特徴的なパワーアップであった「レーザー」が、『グラディウス』や『沙羅曼蛇』と比べて非常に弱くなっていたからである。
リップルレーザーを装備した3、4番に比べ、レーザーを装備した1、2番はあまりにも扱いが難しく、先に進みにくい装備だったのだ。
今回のオールドゲームミュージアムでは、この扱いにくいとされていた「レーザー」にスポットを当て、『グラディウスII』1、2番装備の魅力と攻略過程について振り返ってみよう。
■レーザー
『グラディウスII』のレーザーが扱いづらい最大の理由は、その攻撃判定の小ささにある。
『グラディウス』や『沙羅曼蛇』のレーザーは攻撃判定が非常に大きく、耐久力の低いザコ敵などは、レーザーが見た目当たっていなくとも「近くを通過しただけで」消滅するほどである。そして当時のプレイヤーの多くは、「レーザーってのはそういうもの」と思っていたのではないだろうか。
対して『グラディウスII』のレーザーは、攻撃判定がほぼ見た目通りしかなく、地形の「天井」に配置されている砲台などを撃つためには、地形ギリギリまで自機を移動させなくてはならない。ちょっとしたレバー入力時間の誤差で、地形への接触による即死やフォースフィールドの消耗を招き、それを恐れたおっかなびっくりのライン合わせでは、迅速に敵を処理できなくなる……。
天井に配置された砲台を撃つだけでも、精密なライン合わせのテクニックを要するのが、『グラディウスII』のレーザー装備なのである。
■ワインダー
レーザー系装備で1000万点を目指す上で、最後まで難所としてプレイヤーを苦しめたのは、最終面の要塞突入直後のハッチ地帯である(左頁の写真参照)。
そして、この「最難関ハッチ地帯」を難所たらしめているのは、地形の起伏により巧妙に守られた、たった一つのハッチだった。
高次周では、ザコが出てくる前に何としてもこのハッチを破壊しなければならない。このハッチを残してザコが出現してしまうことは死を意味するのだが、地形と装備の関係上、1、2番装備はそれが非常に難しいのである。ちなみに、3、4番装備なら適当にリップルレーザーを撃っているだけで、このハッチを壊せる。
この問題のハッチを素早く破壊するために、攻略初期から有望視されていた手段の一つが俗に「レーザー・ワインダー」と呼ばれるテクニックだ。
同シリーズのレーザーには、発射後も自機の上下移動(=レバー入力)に追従して軌道が変化する性質があり、これを利用して積極的にレーザーを誘導するのが「レーザー・ワインダー」である。
問題のハッチのように地形の陰に隠れた敵も、ワインダーを利用すれば地形越しに破壊することが可能なのである。
■チキン・レース
しかし、可能であるとはいえ、問題のハッチを破壊する際のワインダーは、相当なリスクを伴うものであった。単純に天井の敵を撃つ場合であれば、レバーを弾くような操作による複数回の微調整で、手堅くライン合わせをすることも可能だが、ワインダーを利用して地形越しに敵を撃つ場合、そうはいかない。
特に、この問題のハッチをワインダーで狙う場合は、タイミング良くレーザーを撃ちながらノンストップで一気に天井ギリギリまで接近し、激突寸前で下に切り返す、という操作を、スピード3速でこなさなければならない。もちろん、激突死のプレッシャーに負けて天井ギリギリまで接近できなければ、ワインダーが甘くなりハッチ破壊に失敗する……。
そしてこの場面で、もはやフォースフィールドをかばうような余裕はない。ワインダーをかけるときに、フォースフィールドの消耗を気にするような「突っ込み」をしていては、ハッチが破壊できない可能性が高くなるからだ。
このハッチを壊すためのワインダーは、次の周に進めるか、ここでゲームオーバーになるかを懸けた、命懸けの「チキン・レース」そのものなのである。
当然、このようなリスキーなワインダー・パターンを疑問視し、ほかの手段を模索するプレイヤーも少なくなかった。特に1番装備の場合、ある時期までは最終面でダブルに換装するパターンこそが本命、と考えるプレイヤーが多かったし、2番装備でもスプレッドボムの誘爆を利用するパターンが考案されるなど、ありとあらゆる可能性が検討されていたのだ。
■テクニック&ハート
問題のハッチをめぐる攻略は、デリケートな手技に依存するワインダー・パターンを信じてとことん極めるのか、それとも1番装備のダブル使用パターンに代表される、ワインダー以外の方向性を模索するか、の選択を迫られるものでもあった。
現実問題として、ワインダーをかける際の「突っ込み」は、プレイヤーの心理状態に影響されやすい側面を持っている。周回数とスコアが増すごとに高まる精神的プレッシャーと戦いながら、12〜13周以上もワインダーを成功させるのは厳し過ぎるとして、ワインダー・パターンの安定性・将来性を疑問視するプレイヤーが居たのは、むしろ当然だったかもしれない。
しかし最終的には、1、2番両装備共1000万点一番乗りは、ワインダー・パターンにより達成される結果となった。ワインダー・パターンは作戦としては単純で、強引で乱暴な直球勝負という印象が強いが、レーザー装備のゲーム性の本質、攻略的な正解とは、まさにそういう性質のものだったのではないだろうか。
レーザー装備の1000万点が、巧妙で小利口なパターンではなく、職人技にも似た絶妙な「手技」と、ワインダーという「チキン・レース」に勝ち続けるための「精神力」が決め手となって達成されたこと……それは、『グラディウスII』をレーザーで遊ぶことの魅力と、深い部分でつながっている気がしてならない。
●コラム(右ページ下段)
――復 活――
『グラディウスII』の場合、復活パターンが確立されるまでの期間は意外に短かった。地域差もあると思われるが、遅くとも発売後3〜4ヶ月後には、全箇所での復活がある程度の精度でパターン化されていたようだ。個人的に火山ステージの最終エリアは、カプセルが一個も出現しないうえに、ハッチや火山があるため「こりゃ〜不可能か?」と思っていたのだが……。『グラディウスII』の発売直前に、ゲーメストで『グラディウス』の復活が取り上げられたせいで、「復活パターン」開発に対するマニアの取り組み方が、初めから気合入っていた気がするのは筆者だけでしょうか?
(グラディウスII画面写真1のキャプション)
火山ステージの2エリア目、3連続火山地帯を抜けることに成功! しかし、もう少し進まないと次のエリアには行けない……。
(グラディウスII画面写真2のキャプション)
要塞内部の1エリア目。カプセルが多く出るのが、せめてもの救いなのだが、いきなり青カプセルが出て大迷惑することも……。
●コラム(左ページ上段)
ワインダー勝負ポイント解説
(4面:逆火山地帯写真のキャプション)
4面はワインダーがすごく難しいというわけではないが、全体を通して見ると素早くライン合わせをして天井の敵を撃たなければならない場面が多く、慣れないとそのたびにフォースフィールドを削ってピンチに……という展開になりがち。
逆火山に挟まれて二つのハッチが出現。これらもワインダーで破壊する。一見、派手で難しく見える場面なのだが、8面最難関のワインダーに比べると格段に簡単。逆に言うと、この場面のワインダーで手こずっているうちは、8面のワインダーはマスターできない。
(8面:最難関ハッチ地帯写真のキャプション)
本文中の「問題のハッチ」はこの写真の右上に見えているハッチのこと。このハッチ以外にも、画面左から出現するダッカー(二脚の移動砲台)など、やっかいな敵はてんこ盛り。慣れないうちは、ワインダーを仕掛けるクリーンな状況を作るのも難しい。
右上のヤツが本文中に何度も出てくる「問題のハッチ」だ! 実に巧妙な地形に守られており、レーザー系装備の天敵となっている。この地形とハッチの配置によりもたらされるゲームバランスって、開発者はどこまで計算していたのだろうか?
(ハッチ左側の天井を示しつつ)チキンレース(ワインダー)失敗による悲惨な死亡事故は、だいたいこの辺りで発生する。何度この壁に突っ込んで死んだことか……。
●コラム(左ページ下段)
――奇手奇策――
本文中でも触れた通り、最難関ハッチ地帯の「問題のハッチ」を確実に破壊するため、様々な奇手奇策が考案された。シールドをタイミング良く呼んで、飛来途中にぶつけて壊す、壁にオプションをめり込ませておいて、スプレッドボムの爆風で破壊、ハッチの右に回り込んで、テイルガンで破壊、果ては「フォースフィールド3枚でハッチに特攻!」なんてことを言い出すヤツまで……。ワインダーという正解が定着した後ではどれも笑い話だが、実は筆者、「テイルガンパターンが正解!」とか思いこんでいた時期が1ヶ月ほどあって、6−8まで行ってしまったという、輝かしい過去を持っている。
(要塞面、ハッチ地帯をダブルで攻撃する写真のキャプション)
問題のハッチをダブルで狙撃するパターンは実はかなりシビア。ワインダー・パターンより難しいのでは?
(火山ステージをダブルで進む写真のキャプション)
1番装備の場合、火山ステージではダブル・レーザーどっちもアリという感じ。個人的にはダブルでやるのがスキだった。