03年1月号 「NEVER SAY NEVER」
残り少なき同胞へ、最後のメッセージ。
03/12/21 アップ
●本文
ある種のゲームには、常軌を逸したやり込みや、天才的なテクニックや発想などによってのみ掘り起こすことが可能な「本当のこと」が、容易にはたどり着けないところに存在している場合がある。
ゲーム性の深遠に眠るそういった「真実」は実に興味深く魅力的なもので、時に超絶的なハイスコア、時にギャラリーをも感動させるスーパープレイを生み出す力を持っている。
オールドゲームミュージアム最終回、キーワードは「NEVER SAY NEVER」――絶対に絶対無理だと言ってはならない――。
本当のことに、たどり着くために。
■グラディウスの真実
安易に諦めることがいかに愚かしく、それがどれだけ可能性の芽を摘んでしまうことか……。そのことを心の奥底に刻み込まれたのは、グラディウスにおける「復活パターン」の存在を知らされたときだった。
かく言う筆者も、当時はさんざんこのゲームにハマっており、それなりに周回数も伸ばしてはいたものの、逆火山ステージや要塞ステージでミスした場合の「復活」に関しては、絶対に不可能だと考えていた。
もっともこれは、決して筆者だけが安易な思い込みに囚われていたわけではない。「復活不可能」というのは、当時大多数のグラディウス・マニアが信じて疑わない「常識」だったと言っていいだろう。
もちろん、高度に発達した現在のシューティング攻略概念を持ってすれば、グラディウスの「復活」は、端から絶望視するほどの難度ではないかも知れない。しかし、パターン性の高いシューティングがほとんど無かった当時は、『グラディウス』の逆火山や要塞ステージ復活のような、「ドット単位、フレーム単位の超精密な動きによる完全パターン化」という方法論そのものが、無いに等しい時代だったのだ。逆の見方をすれば、我々は『グラディウス』というゲーム、そしてその復活パターンを開発したプレイヤーたちが「諦めなかった」おかげで、このような攻略方法論を与えられ現在に至っているともいえる。
■パロディウスの真実
筆者も『グラディウス』の復活パターンに衝撃を受けて以来、諦めないことを信条にしてはいた。しかし、難しいゲームの確信を探り当てるのは、やはり困難なことが多い。「心が折れて」しまい、自力で本当のことにたどり着けないゲームも、当然あった。
心が折れた経験はいくつかあるが、中でも思い出深いのは、『パロディウスだ!』の2周目攻略である。
このゲームは2周目の難度がかなり高いのだが、特に2周目3面が突出した難度となっており、攻略を進める上での大きな壁になっていた。当時この2周目に挑戦していたマニアの大半(筆者含む)は、2周目3面の存在により絶望感を深め、このゲームを諦めていったのだ。
しかし、完全に不可能でない限り、諦めないものは必ずどこかにいるもので、今は無き名古屋の名門・イエローハットに集まっていた東海地方のマニアたちが、この難関を安定して突破するパターンを開発したのである。
より正確なニュアンスとしては、「パターンを開発した」というよりは、「パターン化に不可欠な戦略を確立した」、ということになるだろうか。
このゲームの攻略的な「本当のこと」は、「カプセル周期を調整し、青カプセル&ベルアイテムの出現位置を精密に管理した上で2−3を完全パターン化すること」に集約されていたのである。それさえできれば、後は何とかなる、というのがこのゲームの2周目の姿だったのだ。
■仲間たちへ
「本当のこと」には、できることなら自力でたどり着きたいものだ。当然のことだが、他人が発見したり、作り上げたりしたものを教えられるよりも、自分の力で見つけ、作り上げるほうが楽しいに決まっている。
しかし残念なことに、人に与えられた時間には限りがあるし、能力もまた人それぞれだ。「本当のこと」を自力でつかむのは容易なことではなく、そういった経験を得られるのは限られたプレイヤーなのかもしれない。
しかし、諦めてしまえば、その瞬間に可能性が自分から失われてしまうことだけは、忘れてはならない。
――絶対に絶対無理だと言ってはいけない――この姿勢さえ保っていれば、後は努力と熱意と、ほんの少しの才能さえあれば、かなり多くの人に可能性があるのだ。
また、そういった姿勢を持っていれば、他人が見付け出した「本当のこと」に触れたときも、より深くその意味や価値を理解できる。筆者も、パロディウスでは2周目3面で一度は戦線離脱してしまい、名古屋のプレイヤーに影響されて再開したクチだ。自力で2周目3面を突破したわけではない、という心残りもあるが、彼らが確立した戦略のおかげで2周クリアまで遊びきることができた喜びは、大きいものだった。他人がつかんだものであっても、それにより好きなゲームの真実に触れられるのは幸せなことだし、意味のあることなのだ。だから、「本当のこと」をつかんだ者は、何らかの形でそれを世に示し、皆を導いて欲しいと思う。
本当に面白いゲームも、それを理解して共有できる仲間も、絶望的なまでに減りつつある。
しかし、だからこそ、今この稿を読んでくれているあなたには、諦めず、さまざまなゲーム――それは過去のさまざまな作品も含めて――で、一つでも多くの「本当のこと」を掘り起こすことに挑戦して欲しい。
私は死ぬまでに、もっともっと、多くのゲームについて、本当のことが知りたい。
●コラム(右ページ下段)
――気になるゲーム――
最近知ってビックリしたのは、『ミュータントナイト』が全3周構成で、しかもクリアしている人がいるということ。相当難しくて、相当マイナーなんだけど、やっぱりやる人はどこかに必ず居るもんなのだなと。上の本文中じゃ小難しいこと書いてますが、要するにこういうことをいっぱい知りたいだけなんですね。もちろん、自分でプレイして極められればそれに越したことはないんだけど、興味のあるゲームを今から全部やってたら、間違いなく寿命オーバーする自信があるし……。とりあえず、『カルテット』のラスボスを、最強装備のエドガーでノーダメージクリアできるかどうかを、だれか教えてください。
(ミュータントナイト画面写真のキャプション)
『ミュータントナイト』は故・UPLによる奇怪なアクションゲーム。一見クソゲー風味だが、実はかな〜り面白いのだ。
(カルテット画面写真のキャプション)
『カルテット』は当時けっこうやり込んだけど、とうとう一億点は出せないままだった。一度上手い人の話を聞きたいものである。
●コラム(左ページ上段)
はじめは「無理!!」と思ったけれど……
■『グラディウス』の復活
2周目以降、逆火山ステージや要塞ステージのハッチ地帯などは、ミスしたら復活不可能というのが常識となっていたが、当時のゲーメスト誌上で復活パターンが紹介され、マニアの反響を呼んだ。パワーアップシューティングゲームの「復活パターン」に対するマニアの意識は、この時から大きく変わっていった気がする。
(高次周要塞ステージ安地写真のキャプション)
なぜかザコの弾に当たらない(本当)。
■『ストII』対戦ザンギ
一回つかめば勝ちだけど、待たれたら終わりのクソ弱キャラ、というのがある時期までの認識だったザンギエフ。しかし、立ちスクューを駆使した地上戦の発達により徐々に闘い方が確立されていき、大幅なパワーアップを果たした。何でもアリ対戦の中でしか発達しえない、シビアなゲーム性に痺れたマニアは少なくない。
■『パロディウスだ!』の2周目
3面の後半で緑ベル(巨大化&無敵)を取ってベルを運びながらボスまで行き、ボスで赤ベル(菊一文字)を使う、という戦略が確立してから、再びこのゲームをやり始めるマニアが増えてきた。ちなみに、3面の後半で1万点稼ぐために緑ベルを使わないパターンを作り、実戦でちゃんとこなしている人もいた。
●コラム(左ページ下段)
――けど、無理なモンは無理――
絶対に絶対無理だと言わないほうが良いのですが、それでもやっぱり絶対無理だとしか言いようの無いゲームはあるんですね。『ゼロウイング』はループするシューティングですが、正攻法での1000万点はやっぱり絶対無理でしょう。高次周ではすべてのザコが超〜高速の5WAY弾を連射してくるようになり「無理」です。このゲームは通常の基板でもディップ設定で無敵にでき、プレイ中の切り替えも可能。興味のある方は基板を手に入れて、無敵状態+ショット連射押しっぱなしの状態で、一晩寝かせてみることをオススメします。朝になれば、宇宙一終わっているシューティングゲームの、本当の姿を見ることができるでしょう。
(ゼロウイング画面写真1のキャプション)
一晩寝かせたランクだと、本気で敵の弾が見えない。というか、弾速があまりに速過ぎるため、ワープしているように見える。
(ゼロウイング画面写真2のキャプション)
ハイスコア集計上の1000万点は10UP出現時に残機つぶしをして出されたもの。正攻法では、4周クリアも出ていないのでは?